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大阪高等裁判所 昭和38年(ネ)64号 判決 1963年10月29日

控訴人 久保田章治郎

被控訴人 国

訴訟代理人 山田二郎 外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする、との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実土の主張、証拠の関係は、被控訴人において本件土地については昭和三七年二月一〇日被控訴人に所有権取得の登記があつたと述べ、控訴人において不動産登記が対抗要件とされているのは一般私法上の売買取引関係における私法的な物権変動について正当な利害関係に立つ第三者の保護のためであつて、農地買収のような強制的な所有権の買上についてこれが適用は議論の余地はあるけれども、自創法による買収は土地収用による土地の収用とはその趣旨を異にし国が介在して私人間に農地の所有権の強制移転を図つたものであり、国は一時的に所有権者となるにすぎず、終局的には私入間の所有権の移動にほかならぬのであるから、農地買収手続において国または農地委員会も民法第一七七条の第三者に包含されるものと解するのを相当とする。自創法が国の買収と国からの売渡との両手続において所有権の移転を一度中断させ、買受人に対しては原始取得の形式をとつたことも、国の所有権取得を完全にしようとする目的からの一の法律的技巧にすぎないので、右解釈の妨げにならないと考えると述べたほか、原判決記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

被控訴人の本訴請求が正当であり、控訴人の主張の失当なることは原判決理由欄記載のとおりであるからこれを引用する。

本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三八四条第九五条第八九条に従い、主交のとおり判決する。

(裁判官 岩口守夫 藤原啓一郎 岡部重信)

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